有限会社 桃園電設
工業用の廃水処理や原料のプラント制御などの仕事をしていると、ECセンサやphセンサで排水等の導電率や酸性・アルカリ性を制御し、タンク内で薬液を投入しつつ攪拌機で混ぜるなどの行程と水耕栽培の共通点に気づきました。試験運用として水耕栽培のミニモデル(あくまで中小企業における基礎研究なので、予算をそんなにかけられない)を製作実験を始めましたので、経過を記述していきたいと思います。当社は電気屋さんなので最終的には安価な水耕栽培プラント(ハウス内の熱管理・養液のph・EC制御や酸素混入方法)を電気的に制御して作り上げていければいいと考えています。
溶液の温度について
ミニトマトやイチゴやナスを2008年5月から水耕栽培(ビニルハウス内)にて実験的に栽培し始めましたが、だいたい6月中旬頃からそれぞれの作物を萎れさせてしまいました。「溶液濃度(EC)がおかしいのか?」「pHがおかしいのか?」「気温がおかしいのか?」とか色々調べた結果、一番の原因は「溶液の水温が日中30℃を越えていた」が最大の原因であるのを突き止めました。
特徴としては
@晴天時の日中に葉っぱが萎れてくる。しかし曇天時や夜−明け方の時は葉っぱが復活する。
A水耕栽培に特徴的な、白い根っこがだんだん茶色くなってくる。最終的には枯れて腐ってくる。
溶液の水温が高くなると、溶液に溶け込める水中酸素飽和量が減少する、けれど植物の根の酸素吸収量は水温が高くなるにつれて増加するため、酸欠状態になってしまいます。これが原因でした。何とかして溶液水温を上げすぎない工夫が必要でした。前述の失敗の結果、08年7月より、栽培する容器(最初はプランタだった)を大きくして、水温が上昇しにくくしたり、運動会などで使用するアルミマットを使用して保温・遮光したり、ビニルハウスの側面を解放したり、ビニルハウスの上部に遮光ネットを張ったり、換気扇で換気したり、扇風機を溶液にあてたり(気化熱で温度を下げる)対策を行いました。
1気圧で塩化物イオンがない場合(水耕栽培の溶液そのものでは条件が異なるので参考程度)の酸素飽和量
| 水温(℃) | 水1L当たりの酸素飽和量 |
| 5℃ | 12.37mg/L |
| 10℃ | 10.92mg/L |
| 15℃ | 9.76mg/L |
| 20℃ | 8.84mg/L |
| 25℃ | 8.11mg/L |
| 30℃ | 7.53mg/L |
| 35℃ | 7.04mg/L |
| 40℃ | 6.59mg/L |
養液栽培における好適水温と限界水温
| 作物名 | 低温限界水温 | 好適水温 | 高温限界水温 |
| トマト | 13℃ | 21℃−24℃ | 32℃ |
| イチゴ | 8℃ | 18℃−20℃ | 28℃ |
水温が20℃程度の時、もっとも栽培植物が成長する。20℃の時の根の酸素吸収量を100とした時の表を下記に示す。
根の酸素吸収量と温度の関係
| 種類 | 5℃ | 10℃ | 15℃ | 20℃ | 25℃ | 30℃ | 35℃ | 40℃ |
| トマト | 36 | 59 | 73 | 100 | 118 | 177 | 182 | 191 |
| イチゴ | 63 | 67 | 87 | 100 | 120 | 137 | 170 | 163 |
養液栽培における必要最低照度
| 作物名 | 必要最低照度 |
| トマト | 45000lx |
| イチゴ | 15000lx |
季節による概略照度
| 季節 | 晴天時最大照度 | 曇天時最大照度 |
| 夏 | 約 120000ulx | 約 60000lux |
| 冬 | 約 50000lux | 約 15000lux |
| 春・秋 | 約 85000lux | 約 40000lux |
イチゴはあまり照度を必要としない(少々陰があっても大丈夫)ので、多段式で栽培しても問題がなさそうである。
pHやECを測定するために、下記の測定器 株式会社アタゴ製 を購入しました。簡易的ではありますが、溶液の管理が可能になります。pH計は「溶液全交換のタイミングを見極めるため」「栽培植物の養分吸収をチェックするため(健全に成長している場合はだいたいpHが徐々に上昇していく)」に用いています。また、EC計は「栽培植物の成長段階での溶液濃度の調整(水道水をぶち込んで薄い溶液濃度から栽培を開始するため)」に用いている。
・デジタルpHメーターDPH-1
・デジタルECメーターDEC-1
協和株式会社製 ハイポニカ液肥500cc(A・B液肥セット)
3Lの水道水にハイポニカ肥料A液6cc(キャップ1杯)、B液6cc(キャップ1杯)を投入して、よくかき混ぜ、液肥を作成する。(肥料を500倍に薄める)
ハイポニカ濃縮液体肥料 A(原液が透明の方)成分量
硝酸性窒素(N) 1.0%
水溶性燐酸(P2O5) 3.8%
水溶性加里(K2O) 5.5%
水溶性苦土(MgO) 1.0%
水溶性マンガン(Mn) 0.027%
水溶性ほう酸(H3BO3) 0.055%
ハイポニカ濃縮液体肥料 B(原液が茶色の方。キレート鉄添加のため茶色なのか?)成分量
硝酸性窒素 4.0%
水溶性加里 5.0%
500倍に薄めた液肥を上記測定器で測定した結果、
EC値:1.3mS/cm
ph値:6.5pH

アミノハウス1号・大塚ハウス2号・大塚ハウス5号の場合
大塚ハウスの場合、PDF取扱説明書では基本のEC値が2.6mS/cmで計算されており、その場合大塚ハウス5号は使用しないが、ハイポニカと同じようなEC値(1.3mS/cm)で使用する場合、下記のような配合が必要となる。(EC値が1.3mS/cm以下の濃度で使用する場合、大塚ハウス5号を使用する)
アミノハウス1号肥料 成分量
硝酸性窒素(N) 10.0%
水溶性燐酸(P2O5) 8.0%
水溶性加里(K2O) 27.0%
水溶性苦土(MgO) 4.0%
水溶性マンガン(MnO) 0.1%
酸化ほう素(B2O3) 0.07%
鉄(Fe) 0.18%
銅(Cu) 0.002%
亜鉛(Zn) 0.006%
モリブデン(Mo) 0.002%
大塚ハウス2号肥料 成分量
硝酸性窒素(N) 11.0%
石灰(CaO) 23.0%
大塚ハウス5号肥料 成分量
硝酸性窒素(N) 6.0%
水溶性加里(K2O) 9.0%
水溶性マンガン(MnO) 2.0%
酸化ほう素(B2O3) 2.0%
鉄(Fe) 5.7%
銅(Cu) 0.04%
亜鉛(Zn) 0.08%
モリブデン(Mo) 0.043%
アミノハウス1号(大塚ハウス1号とほぼ同じ):水1000L当たり、750g
大塚ハウス2号:水1000L当たり、500g
大塚ハウス5号:水1000L当たり、25g
6L単位の液肥を毎回作るのが現在の水耕栽培の容器に都合が良く、また分量を測定するのに10ccのスポイトで計量するため、この両者で都合の良い濃縮率を作成することとする。
アミノハウス1号:水6L当たり、4.5g必要
大塚ハウス2号:水6L当たり、3g必要
大塚ハウス5号:水6L当たり、0.15g必要
アミノハウス1号の濃縮液:水1Lに対し、150gを溶かして濃縮液を作成。6Lの養液を作る際には濃縮液30ccを入れる。(30cc/1000cc*150g=4.5g)
大塚ハウス2号の濃縮液:水1Lに対し、100gを溶かして濃縮液を作成。6Lの養液を作る際には濃縮液30ccを入れる。(30cc/1000cc*100g=3g)
大塚ハウス5号の濃縮液:水1Lに対し、30gを溶かして濃縮液を作成。6Lの養液を作る際には濃縮液5ccを入れる。(5cc/1000cc*30g=0.15g)